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​『空間視点』でアルファ碁の棋譜を見る     ◆思考エッセンス⑤

アルファ碁の棋譜の中で話題になった一手をいくつか見ていきましょう。

これらを『空間視点』で、石の影響範囲に注目して見ていくと、おもしろい解釈となります。

1図、黒1の三々入り。これは意味が分からない手ですが、白△の石の影響範囲に注目してみてください。

白△は隅に対して白地を作る働きと、中央に向かって勢力を広げる働きがあります。

そして、まずは地になりやすい隅の影響範囲を黒1で妨害していると思います。

2図はその後数手進行した局面で、今度は下辺の白石の影響範囲を黒1で妨害しています。

これは『石視点』の解釈では、左下の白を攻めている。

更には下辺の白一子を攻めているということなのですが、アルファ碁には石を攻めるのが良いことだとはインプットされていません。

※そもそも『攻める』という概念が存在していません。

アルファ碁のデータベースから導き出される過去の良い手の中では『相手の空間を潰す手=相手の石の影響範囲を妨害する手』が高得点になっているということだと思います。

つまり、『石を攻める』と解釈すると再現性がない思考エッセンスとなり、石の影響範囲に注目して、『相手の石は無力化。自分の石は影響範囲を最大にする』と考えると、再現性あるエッセンスとなります。

ここで、『空間視点』で考えた時にある誤解が発生するかもしれませんので、正しい『空間視点』についてもアルファ碁の棋譜の解釈と併せてご覧いただきましょう。

3図​の白1は、左上の黒石の影響範囲を妨害する意味の一手です。

ここまでこのコーナーをご覧になられた方は、この手の意味が理解できるようになられたかもしれませんね。

そしてこの後、数手進んだ時に、白1の前の局面では予想もしなかったところに白の空間が出現しています。

 

 

4図の白1から白7までをご覧ください。

上辺に白の空間ができています。

 

因みに『空間』とは『地』の前段階の意味でもあり、一般的には白模様や白の勢力圏などと同じ意味です。

私は、地でなければ価値がないかのような誤解を避けるため、地であってもダメ場であっても、『空間視点』では同様に価値があるものとして扱っています。

※囲碁は石ではなく『空間』に価値があるためです。

 石は『空間』を得るための道具にすぎません。

そして、左上の白1から黒の空間を潰して、白の空間にしたことに価値があります。

我々人間は、『石視点』で解釈すると、黒を強くしただけですし、白地もできていないのだから、白1から7までは悪いと判断します。

しかしアルファ碁は『石視点』では考えずに、お互いの『空間』がどれだけ増減したかに注目して評価していますから、この進行はありなのでしょう。

アルファ碁的に解釈すると、上辺が地かどうかの問題よりも、中央に向かって白に発言権がある空間ができたことを評価しているのだと思います。

つまり白7までの進行は、黒石の影響範囲を限定し、白石の影響範囲を最大にしたと見ることができます。

私は、これがアルファ碁の棋譜の理解の最大のポイントだと考えています。

それでは、私がこの理論を活用して打ってみた局面をご覧いただきましょう。

良い手かどうかは分からないのですが、自分のこれまでの碁では考えられない世界観。

 

そして、明らかにおもしろい打ち方だとの実感があります。

​これを皆さんにも使っていただき、囲碁のおもしろさを更に理解していただけたらと思っています。

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